「売却したくないので賃貸に」は可能?
「愛着のある住まい、できれば手放したくない。賃貸に出すのは可能だろうか?」といった悩みを抱えるお客様は少なくありません。実際のところ、これはとても悩ましい問題と言えます。物件やお客様が抱える事情など条件や状況が多岐に渡るため、判断が難しいからです。
住宅ローンの残債がある物件は賃貸不可!?
まず、お客様にお聞きします。お客様の住まい、住宅ローンは完済していますか? もし、残債があるようなら賃貸に出すのは難しいと考えたほうがいいでしょう。住宅ローンが残っている一戸建てやマンションの賃貸は、基本的に不可だからです。
住宅ローンで融資されるのは、ご自身が住むための物件、いわゆる“自己居住用”の物件を購入するための資金になります。そのため、融資を完済しないまま住まいを他人に貸すのは、ローン契約違反になってしまうのです。とはいえ、方法もあります。それが後述する「定期借家契約」です。
賃貸に出した不動産物件は居住用ではなく、投資用の“収益物件”と判断されるため、その物件を将来売却しようと考えた時、売り辛くなることがあります。投資用物件には住宅ローンが使えません。したがって、物件の購入希望者は、現金や不動産投資用の高金利ローンを利用しなくてはならないからです。
期間限定で貸し出せる定期借家契約
住まいを賃貸に出す方法のひとつとして考えられるのが「定期借家契約」です。
これは、期間を限定して他人に住まいを貸すことができるもので、「今の住まいを一時的に離れる必要があるが、いずれまた戻る」と決まっている場合に有用な契約と言えます。遠隔地への転勤や海外赴任、また、親の介護で実家へ戻る場合などに使われることが多いようです。
通常の借家契約(普通借家契約)は、貸主様からの解約や更新の拒絶は正当な事由がない限りできないなど、借り手を保護する意味合いが強く、貸主様には厳しい制約があります。そこで、住宅の有効活用促進のため、2000年に定期借家権が導入され、一定の契約期間に達したら契約が終了する借家制度が誕生。契約期間の満了で確実に物件を明け渡してもらえる仕組みが整いました。
定期借家契約のデメリットとしては、賃貸料が相場より低めに設定されるケースが多いことが挙げられます。これは、基本的に契約の更新ができないからです。また、当初の予定より早く戻ることになっても契約満了までは住まいを明け渡してもらえないと考えたほうがいいでしょう。
戸建とマンションで貸しやすさは異なる
便利な地域に建つマンションの需要はとても高く、借り手を見つけるのはそれほど難しくありません。また、需要が高いということは、高く売れることも意味します。査定額は年数が経つにつれて下がり続けるもの。将来を見据えて売却の検討も続けることをお勧めします。
実際のところ、マンションの場合、最寄り駅から徒歩圏内であったり、生活や通勤に便利なエリアに建っているものが多いことから戸建より借り手を見つけやすく、「賃貸」を選択肢に含めるお客様が目立ちます。
一方、戸建の場合、マンションと比較して需要が少なく、賃料を下げても借り手がなかなか見つからないことが少なくありません。半年間も借り手が決まらないことがあり、空室リスクが高いことから「売却」を選択するケースが多いようです。
まとめ
賃貸に出す場合、最も重要なのは空室リスク。マンションの場合、借り手が見つからない間も管理費や修繕積立金などは変わらず発生するので注意が必要です。
また、定期借家契約で住宅ローンの残債がある住まいを貸し出した場合、住宅ローン控除が受けられなくなります。また、金融機関によっては金利が引き上げられるケースも。条件は金融機関によって異なりますから、懇意の金融機関や不動産会社に相談しながら慎重に検討することをお勧めします。
売却か賃貸かの判断で迷ったら、どうぞお気軽にご相談ください。